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次世代エネルギー「水素」で描く世界戦略

2022
02.11

次世代エネルギー「水素」で描く世界戦略

ビジネス

こんにちは。ハイクオリティやまなし編集部のアブラブロです。県職員が自ら企画して執筆する職員企画記事、第2回目は次世代エネルギー「水素」を取り上げます。

次世代エネルギー「水素」で世界へ。

新たなエネルギー源として注目を集める「水素」。今回は、この「水素」貯蔵・利活用システム(P2Gシステム)の海外展開に取り組む山梨県企業局新エネルギー推進室が描く世界戦略を紹介します。

次世代エネルギーって何?なんで山梨県なの?
なかなかイメージはできないですよね。

じつは山梨県の取り組みには深い歴史があり、社会が脱炭素に向けて大きく舵を切り出した今、その蓄積が世界に向けて花開こうとしています。

1. 「水素」が次世代エネルギーと評価される理由は?

「水素社会」という言葉を聞いたことがありますか?「水素」は数年前、燃料電池自動車の商用化とともに、次世代エネルギーのひとつとして、メディアで特集が組まれるなど大きな話題になっています。

では、なぜ、「水素」なのか?

①「水素」は電気を使って水から取り出すことができるのはもちろん、石油や天然ガスなどの化石燃料、メタノールやエタノール、下水汚泥、廃プラスチックなど、さまざまな資源からつくることができます。また、②酸素と結びつけることで発電したり、燃焼させて熱エネルギーとして利用することができますが、その際、CO2を排出しません。

こうした2つの特徴から、化石燃料に頼らない新たなエネルギー源となる可能性を秘めた脱炭素社会の切り札として注目を集めているのです。

2. P2Gシステムとは?

P2Gシステムは、太陽光などの再生可能エネルギー由来の電力(Power)を活用し、水の電気分解から水素(Gas)を製造し、それを貯蔵・利活用する技術のことです。

製造された水素は、火力発電における化石燃料の代わりに燃焼されて発電に利用されたり、燃料電池に貯蔵され、自動車などの機械の動力源となります。

カーボンニュートラル社会の実現に向け、①エネルギー自給率の向上、②温室効果ガスの削減、というメリットから世界的に期待されている仕組みなのです。

3. なぜ山梨で「水素」?

脱炭素社会の切り札とも言われている水素の利活用についてはあまり知られていませんが、ここ山梨県では、山梨大学において40年以上も前から水素をエネルギー源として使う燃料電池の研究開発が行われてきました。


山梨県における水素・燃料電池の最大の特徴は、山梨大学をはじめとした研究拠点が集積し、水素の製造から利用まで、フルラインアップで揃っていることです。
国家プロジェクトで燃料電池に関する研究を進めてきた世界トップレベルの研究拠点である山梨大学燃料電池ナノ材料研究センターをはじめ、研究開発拠点の集積が進んでいます。また、山梨県甲府市の米倉山にある電力貯蔵技術研究サイトでは、P2Gシステムの実証研究を、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受け、山梨県企業局が進めてきました。

このように山梨県では水素の製造から利用まで一貫した取り組みが行われていることから、「やまなし水素・燃料電池バレー」「水素といえば山梨」との評価を確立してきたのです。

4. 水素で描く未来

「中東の太陽光発電施設で水素を作ってもらい、輸入する」

太陽光発電で水素を作り、ためて、運び、使うというP2Gシステムの世界展開について、山梨県企業局新エネルギー推進室・宮崎室長に話を聞きました。

日本では、2050年を目途に脱炭素社会の実現に向けた取り組みが始まったところですが、世界では、脱炭素化を温暖化問題解決のための方法であるとともに、成長戦略と位置付けて、さまざまな動きが加速しています。

これまで米倉山の太陽光発電施設で、山梨県企業局が東レ(株)と東京電力などと共同で技術開発を進めてきたP2Gシステムについて、稼働を開始したのが令和3年6月。

「クリーンエネルギーへのニーズが世界的に高まっており、開発したシステムの今後の活用を考えたときに、国内で熱の利用量が多い工場等への展開だけでなく、海外の再エネ資源国への展開についても可能性が高いと考えた。」
宮崎室長はこう話します。

山梨県企業局としても、各国の駐日大使へシステムの売り込みを開始。宮崎室長は、当初「開発したシステムの技術には自信はあったが海外諸国が興味を示すかは半信半疑だった。」と振り返りますが、ふたを開けてみると多くの国が興味を示しました。
特に興味を示したのが中東のオマーン。オマーンのブサイディ駐日大使は「P2Gを本国に報告し、山梨県とオマーン本国の協力に結び付けたい」と語りました。「中東の太陽光発電施設で水素を作ってもらい、輸入する」という青写真はここからはじまりました。

P2Gシステムは、山梨県企業局・東レ(株)・東京電力による共同事業体「やまなし・ハイドロジェン・カンパニー(YHC)」が事業展開のエンジン。システムそのものを、国内外の様々な場所への導入し、各地でCO2フリーの水素エネルギーを製造・供給することにより、共同事業体が利益を上げ、新たな水素エネルギー産業の創造を目指しています。このP2G事業がビジネスモデルとして確立できれば、山梨県は、YHCへの出資割合に応じた配当を得ることも期待できます。海外へ目を転じれば、世界的なカーボンフリー化の流れの中、近い将来、グリーン水素に係る市場の急速な拡大が見込まれており、本県の世界最先端のP2Gシステムは、その世界市場でも十分に勝負ができると考えています。
先進的な取り組みによって世界から集めた収益を地域の発展のために更なる投資へ繋げる。『山梨県から世界へ』。大きな夢が、今、動き出しました。

宮崎室長は、今後の課題について、「P2Gによるクリーンな水素(グリーン水素)は、天然ガス等の化石燃料から作り出す場合よりもコストが高いこと。」と打ち明けます。

製造コストの問題については、グリーン水素利用促進のための制度の導入やグリーン水素自体の普及が進むことによる資材等の単価減によって解消できる一方、国内外の事業者との競争激化が予想され、常に最新の情報を掴んでおく必要があるとのこと。

「この取り組みの究極のゴールは、国内外・業種問わず、熱エネルギーを利用する工場等や地域において、山梨県の技術が活かされたP2Gシステムから産み出されたグリーン水素が利用される社会をつくること。」(宮崎室長)


今、世界は脱炭素に向けた地殻変動のまっただ中にいます。

山梨県発の技術が新たな社会の実現を牽引することは、地域社会の大きな誇りとなるもの。山梨県企業局の取り組みにエールを送りたい。

関連サイト情報

山梨県/「水素・燃料電池バレー」をめざして
https://www.pref.yamanashi.jp/miryoku/waza/nenryodenchi/index.html

山梨県/Power to Gas(P2G)システム
https://www.pref.yamanashi.jp/newene-sys/powre_to_gas_system.html